お盆の迎え火に関する根本的な考え方の変化
「ねえ、お母さん。どうしてお盆には火を焚かなくてはならないの?」
「ご先祖様をお迎えする準備よ。家のありかを教えてあげて帰ってこれるようにするのよ」
ごくごく平凡な会話である。
「ねえ、お母さん。隣の家も同じように先祖様が帰って来れるように火を焚いていたら迷わない?」
「そうね、その時は、隣の家の火を鎮火してきなさい」
「わかった……でもお母さん、先祖様って亡くなった時に、火葬で肉体を燃やされたんでしょ?」
「そうよ」と母親。
「じゃあ、火を見ると怖がってしまうんじゃないかな」
「そうね。肉体を焼いた火の元に帰ってきたいとは思わないかもしれないわね」
「どうしたらいいかなあ……」
先祖思いの息子に感涙である。
母親は言う。
「本物の火じゃなくて、燃えるような熱血と熱意の炎で先祖様に安全な火を見せるのはどうかしら」
「わかった!」
そういうわけで、この家庭ではお盆の先祖を迎える準備として、熱血指導で有名な専属教育者を招き、燃えんばかりの熱意で勉強とスポーツに打ち込んだ。
おかげで頭も良く運動も万能な人間になった。
街一番の期待の星になり、燦然と輝いている。
あまりに目立つので、その街で亡くなった先祖たちは血縁関係なく皆列をなして輝く光目がけてやってくる様だ。
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